序文とあとがきの人のブログ

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「非線型発展方程式の実解析的方法」の3年程の研究の感想と成果(Amazonのレビューのコメント欄から転記)


(先日, Amazonではレビューへのコメントの機能が廃止されたはてなブログでは二重以上の括弧は脚注になるので多少記号を変えたまた細部の表現を改めたが殆んど変更はない元々パソコンで書いた物であり多少見にくいかもしれないがご容赦いただきたい非線型発展方程式を学ぶ人々のお役に立てればうれしい一般に方程式の解を求めさせる問題は解の存在が前提である. )


 

予備知識は微分方程式(コーシー-リプシッツの定理・非斉次線型連立1階常微分方程式の解法・定数係数斉次線型2常微分方程式の解法), 位相(ユークリッド空間の位相稠密性距離空間の完備化), 実解析(ルベーグ測度ルベーグ積分微分積分の入れ替え積分の順序の交換フーリエ変換超関数), 関数解析(バナッハ空間・ヒルベルト空間・半群の初歩・定義域が適当な関数空間で稠密な有界線型作用素のノルムを保存する拡張・射影作用素・リースの表現定理・ハーン-バナッハの定理)であるがトークス方程式やナビエ-トークス方程式そして移流拡散方程式を理解したするにはベクトル解析が少しだけ要る結局偏微分方程式の解法理論にある摂動法と逐次近似法およびDuhamelの原理は文章に用語として現れている様子で意味を知らなくても結論自体は理解できる偏微分方程式に対する逐次近似法とDuhamelの原理は金子「偏微分方程式入門」に記されていた.

トークス方程式やナビエ-トークス方程式についてはヘルムホルツ分解も知らないと理解しにくいと思う超関数や半群についても載っている本が少ないのでまた式の意味が伝わりにくいので私としては第13章と第16章の分の紙数は超関数と半群の解説に割くべきだと思う超関数の補足事項ついて私はこの場に知識としても字数としても可能な限り書いた.

割と誤植が多い証明には計算が多く独特の技巧や論理の飛躍がある全体的に説明が短くて埋めるべき行間が広い高度な内容が続く割には解説が少ない気がする独学や単体では無理だと感じたこの本で解説が足りていない事項は参考文献にあるのかもしれない.

しかし最先端の実解析(フーリエ解析特異積分作用素超関数関数不等式関数空間論およびこれらの融合)と簡単な関数解析時間変数を含む半線型偏微分方程式(線型項と非線型項に分けられる方程式)の解の適切性(ただひとつで微分性が高く導関数も連続な解で初期値の連続な変化に対応して連続に変化する解の存在問題:すなわち数理物理学の観点からは存在して当たり前な解の存在問題)時には読み物風に証明を省略したり文章で解説して概要を把握できる読んでいて不思議に感じたりもするから微分方程式に興味がある人は眺めるだけでも数学の広さ・深さ・意外な関係に強い印象を受けると思う.

定義を覚えて命題や定理や系だけを理解するのは簡単だと思う証明を抜きにしても読めるし内容は全体を観てもかなり貴重である和書としては他には書かれていない内容が多い論文の紹介も多い読んでいると応用解析の世界に吸い込まれる英訳が出るべきである証明を抜きにしたら洋書・本格的な専門書・論文よりは簡単なはずだからこの本で準備体操をすると挑む時の困難が解消されるかもしれない.

私としては抽象的な理論も少しは述べて欲しかった例えば「これからの非線型偏微分方程式;藤田-黒田-伊藤「関数解析;溝畑「偏微分方程式論」;柴田-久保「非線形偏微分方程式」「応用解析ハンドブック」に書いてある.

予備知識それ自体は標準的なものを超えず詳しくて楽しかった線型斉次熱方程式(∂_t)u:(∂u/∂t)△u, 線型斉次波動方程式((∂_t)^2)u:(∂^2)u/∂(t^2)△u, 線型斉次シュレディンガー方程式 i(∂_t)u−△u 見かけはよく似ているのに物理学では分野が違うのが面白いと思う3章にあるように, (∂_t)u△u の解で時間変数 t 虚数単位 i を用いて it に変えると, i(∂_t)u−△u の解になることには感激した本文に詳しい説明はないが波動方程式に特殊相対論的思考を織り交ぜたクライン-ゴルドン方程式((∂_t)^2)u−△umu波動方程式と「きわめて類似の性質を持つ」らしいもっと多くを知りたくなった.

1章は数式を交えた前書きのようなものであるここではLが生成する半群(の元)e^(−Lt)と書いているが線型代数に従えばe^(−tL)と書くべきだと思うこの本の全体を通じて, e^(−tL)tを時間区間 I で動かして作られる集合{e^(−tL)}_(tI)半群と言うか略式にその元e^(−tL)半群と言うかはどちらかにするか, 1回前者の言い方をして2回目に略式の言い方をしてその後はずっと略式か決めるべきだと思う20章は本文の方程式との関連で個性的な方程式として連立方程式に変形できるものと本文で解説した方程式の連立方程式の紹介をしている面白い後書きである.

この本を読むには少なくとも 実解析入門」「これからの非線型偏微分方程式」が必要だったフーリエ変換と超関数については「実解析入門」「ベクトル解析から流体へ」「物理数学入門」「ソボレフ空間の基礎と応用」「ルベーグ積分論」「新訂版 数理解析学概論」 偏微分方程式論」「新版 ルベーグ積分関数解析」が参考になる.

線型作用素が生成する半群については参考になる和書に「これからの非線型偏微分方程式(黒田)関数解析」「応用解析ハンドブック」(藤田-黒田-伊藤)関数解析」がある.

関数空間としては台がコンパクトで滑らかな関数の空間数列空間, L^p空間ソボレフ空間急減少関数の空間緩増加超関数の空間L^p空間, (斉次)ベゾフ空間, (斉次)リーベル-ゾルキン空間ローレンツ空間, (実解析流)ハーディー空間, BMO空間, VMO空間これらの適当な組み合わせから成る実補間空間が主役であるソボレフ空間については実解析流にフーリエ変換と緩増加超関数を用いた定義もある.

関数不等式としてはソボレフの不等式など作用素を施された関数と元の関数(または別の作用素を施された関数)のノルムの関係空間と空間の包含関係を表す不等式, L^p-L^q評価, Strichartz-Brenner評価数理物理学に由来するエネルギー不等式などがある.

扱われる方程式は熱方程式(∂_t)u−△uf, シュレディンガー方程式 i(∂_t)u△uf, 波動方程式((∂_t)^2)u−△uf, トークス方程式(∂_t)u−△u▽p0;div(u)0, ナビエ-トークス方程式(∂_t)u(u▽)u△u−▽p;div(u)0, KdV方程式(∂_t)v((∂_x)^3)v(v^m)(∂_x)v0, 波動方程式と熱方程式が合わさっていると考えると式の形が面白い2次元消散型波動方程式 ((∂_t)^2)u−△u(∂_t)uf, 移流拡散方程式系(∂_t)ρ−△ρκ▽(ρ▽ψ)0;−△ψρである. KdV方程式の扱いはかなり少ないように思う16章の非線型放物型方程式と楕円型方程式の連立系である移流拡散方程式系は他書にはなく新鮮だったただナビエ-トークス方程式と関係があると言われても釈然とせず数学的な重要性がよく伝わらなかったどなたかのご教授を享けたい.

L^p-L^q
評価はある関数空間で方程式を解くときに初期値が「あばれない」なら初期値の可微分性が時間の経過と共に向上することを言っている「これからの非線型偏微分方程式」によれば初期値が微分できなくても解は局所的には可微分性が高まることを言っている.

S-B
評価の意味はある関数空間でその方程式から定まる縮小写像不動点の存在を示す方法により解くとき初期値から成る項と非斉次項または非線型項が時空で「あばれない」と縮小写像を定める式の右辺が「あばれない」ことを言っている初期値があばれすぎなければ不動点の存在が示しやすいのだろう.

集合の補集合を表すための c その集合の左上に付いている.

関数空間について全体に出てくるものについて,

A(I;X)
{ u:It→u(t)X : || ||u(t)||_X ||_A(I) ∞},

C(I;X)
{ u:It→u(t)X | τI, lim_(t→τ) || u(t)−u(τ) ||_X 0 i.e. It→u(t)Xの位相で連続 },

C^1(I;X)
{ uC(I;X) | vC(I;X), tI, u'(t)v(t) i.e. It→u(t)X
Xの位相でC^1 }.

局所L^p空間(L^p)_loc(Ω)も任意にコンパクト集合を選ぶごとにそれを固定することによりノルム空間と解釈すると分かりやすい.

以下Ω^n上の関数の空間の表記X(Ω)ΩがR^nの場合はX(Ω)を簡単にXと書くことにする.

2章ではルベーグ空間数列空間ソボレフ空間を定義してイェンセンの不等式ヘルダーの不等式ミンコフスキーの不等式を述べた後フーリエ変換を解説しバナッハの不動点定理の証明で終わる緩増加超関数と超関数を定義しているが超関数については認知度が低い位相線型位相空間論の「帰納極限」で定義されていて緩増加超関数は位相を込めずに単に急減少関数の空間上の線型汎関数としているがこの本では問題なかった参考のために通常の定義を書いておくブラケットエックス〈x〉=√(1|x|^2)と定義されている. |x|>>1なら〈x〉〜|x|そして〈・〉∈C^∞である.

急減少関数の空間 S{ φC^∞ | 番号m0, 多重指数α, |α| lim_(|x|→∞) |x^m (D^α)φ(x)|0

(
 sup_x |x^m (D^α)φ(x)|∞),

limφ_n
φ in S : m, α, |α| lim_(n→∞) sup_x |x^m (D^α)[(φ_n)(x)−φ(x)]|0 },

緩増加超関数の空間 S*{ f :S→ : linear, [ limφ_nφ in S]⇒[ f(φ_n) →f, φ:f(φ) ]}.

試験関数の空間 D(Ω){ φ((C^∞)_0)(Ω) | limφ_nφ in D(Ω) : コンパクトな∃KΩ, n, supp(φ_n)K, α, 一様に lim(D^α)(φ_n)(D^α)φ },

超関数の空間 D*(Ω){ f :D(Ω)→ | [ limφ_nφ in D(Ω) ]⇒[ linear f(φ_n)→f, φ:f(φ) ]}.

距離空間においては写像が連続であることは点列連続であることに同値であることを基にして, S*D*(Ω)を定義していると考えるといいと思う詳しくは有向集合において点列が収束するための条件を定めることは位相を入れることに同値であることによる. (宮島「関数解析」;具体的には「帰納極限」による(「新訂版 数理解析学概論」. ))

まずδD*の定義はむしろ〈δ, φ〉=〈δ(x), φ(x):φ(0) .

D
S, S*D*.

f, 
f, φ〉について, φの変数がξであるときfξを変数とする関数に作用させるときはこれらをf(ξ),f(ξ), φ(ξ)〉と表わすそう書くと第3章と第15章は分かりやすくなると思うし精確である.

 α による微分 (D^α)f : φ,  (D^α)f, φ :(−1)^|α| f, (D^α)φ 〉である.

関数の超関数の意味での微分の定義において本文では(L^1)_loc関数の微分L^1としているが実は∈(L^1)_locである後に使われている多重指数を用いた標準的なものを書いておく. u(L^1)_locの多重指数αによる超関数の意味での微分 u_α とは

u_α(L^1)_loc, φ(C^∞)_0,
∫ (u_α)(x)φ(x)dx
 (−1)^|α| ∫ u(x)(D^α)φ(x) dx .

感覚的には, u_αu|α|微分を表現していると観て左辺を|α|回部分積分すると, uα微分, uを直接α微分せずに表現できるという意味である. uC^|α|ならば部分積分により u_α(D^α)u a.e. となる.

f
C^∞級関数aとの積 af  af : φ, af, φ:=〈f, aφ〉で定められているたたみ込み a af : x, (af)(x):=〈 f, a(x−〉=〈 f(y), a(x−y) 〉で定義される. fが関数ならば以下に述べるように, fが超関数を定義することから関数のたたみ込みの定義と両立している超関数の微分の定義により aC^∞級である. (「ベゾフ空間論」「楕円型・放物型偏微分方程式. )

f
*フーリエ変換 F[f]:⇔∀φS,  F[f], φ :=〈 f, F[φ] .

全てのf(L^1)_loc(Ω)に対して写像F:D(Ω)φ→∫_Ω f(x)φ(x)dx とするとFD*(Ω), すなわちf(L^1)_loc(Ω)は超関数Fを定義する:F, φ:∫_Ω f(x)φ(x)dx (φD(Ω)). 変分法の基本補題により写像 f→F 単射, F→f 単射なので, f←→F を同一視してfD*(Ω)と観てF, φ〉を〈f, φ〉で表わして(L^1)_loc(Ω)D*(Ω) と観ている関数とそれが定める超関数の間の対応は線型性を保つのでこの対応は単射(埋め込み写像)である. (付記:(L^1)_locが関数空間としては最も広く単に「関数」といえばこの空間の元とする変分法の基本補題ではなくリースの表現定理を利用しても同一視できるベゾフ空間論」の研究で発見した. )

本書ではD(Ω)S, D*(Ω)S*と考えてφS, fS*としてよいと考えている.

f
の台supp(f):{ x | (xの開近傍)U_x, φ, supp(φ)U_x, f, φ≠0 }である. fが関数ならば関数の台の定義 supp(f)cl{ x | f(x)≠0 }(となる. (「ベゾフ空間論」「偏微分方程式論」と付録. )

ちなみに第3章について, (∂_t)GLGδ の解(作用素∂_tLの基本解)Gを得ると台がコンパクトな超関数 fE* または台がコンパクトなC^∞級関数 f(C^∞)_0 に対して(∂_t)uLuの解はuGfD* または uGfC^∞で与えられる.

3章ではフーリエ変換あるいは緩増加超関数またはそれらの併用で熱方程式トークス方程式シュレディンガー方程式波動方程式の基本解を導出しているこれらは後の章で用いる熱方程式(∂_t)u−△uの基本解G_t, t  it に変えると G_t  S_t になり, S_tシュレディンガー方程式i(∂_t)u△uの基本解になることには感動したまさに熱力学と量子力学虚数単位 i により結ばれている「ベクトル解析から流体へ」によれば G_t→δ(t→0) in S* であることも面白い.

ここでは積分論における積分微分の入れ替えの定理と積分の順序の変更の定理を多用している私が確認した限りでは埋めるべき行間も含めると微分フーリエ変換フーリエ変換微分8個の式で入れ替わりフーリエ変換の積の積分フーリエ逆変換が元の関数のたたみ込みの積分になっている箇所が2つある.

そして〈f, φ〉を〈f(ξ), φ(ξ)〉と精確に書くと分かりやすいと思う超関数の偏微分方程式への応用を述べた和書で絶版でないものはこの本と井川「偏微分方程式論入門」「ベクトル解析から流体へ」しか知らない絶版書なら「偏微分方程式論」や「楕円型・放物型偏微分方程式」がある.

トークス方程式の基本解の導出では関数空間のヘルムホルツ分解を既知としているようにも感じた明確に解説するべきだと思うトークス方程式やナビエ-トークス方程式の任意の解はdiv(u)0なベクトルuと或る実数値関数pを用いて u▽p と表わされる「ナヴィエトークス方程式の数理」「ベクトル解析から流体へ」および「Navier-Stokes方程式の解法」によれば

L^p
(L^p)_σG^p{ (C^∞)_0 の元でdiv0なもの全体のL^pノルムによる完備化 }G^p{ u(L^p))^n | 超関数の意味でdiv(u)0 }{ ▽p(L^p)^n | p(L^p)_loc} (直和分解;p2ならば直交分解) in ^n である.

シュレディンガー方程式の解の公式について応用解析では量子力学からの自然な要請で初期値と未知関数をL^2で考えるのと文脈からの推測では初期値 u_0(L^1)(L^2) であり, f(s)L^2を仮定すればu(t)L^2となるのであろう.

波動方程式の任意次元の解の公式でc0としているが実はc≠0が正しくc0にもなりうるこれは導出過程で時間変数∈Rであり2次元波動方程式の解の導出と後の章を観ることでも分かる外力や初期値が属する空間の決定には「高次元の解の公式と低次元の解の公式で整合性がなければならない」「連続関数の不定積分微分可能」「可微微分関数は連続関数」「外力と解が連続ならば初期値も必然的に連続」「初期値と解が連続ならば外力は必然的に連続」が背景にあるのだろうか?

3
次元の解の公式の導出で充分な説明なしに((2π)^(1/2))^2と超関数δが現れているが導出を理解するには余分なので((2π)^(1/2))^2は無視してよい本文の式変形は,
〈F[δ], φ =〈δ, F[φ]〉 1/((2π)^(3/2))∫(e^(ixξ))1φ(ξ)dξ|_(x0) =〈1, φ
 F[δ]=1/((2π)^(3/2))
 ^(1)[1]=((2π)^(3/2))δ
であることによる.

2
次元の公式の導出では, β1のときはβ1b(b0)として α_+の代わりに −α_+を考えて(a^2)−(b^2)(a−b)(ab)を用いて評価するとα_−β−1, 1−α_+0を簡単に得て−1α_+0も簡単に得られた. β−1のときはβ−1−b(b0)として同様に0α_1α_+を簡単に得られた.

任意次元に対する公式は「物理数学入門」の他に「ベクトル解析から流体へ」にもある後者の付録にはクライン-ゴルドン方程式の特別な初期値問題の波動方程式の特別な初期値問題への帰着と任意次元に対する解の公式など興味深い解説もある.

4章には, L^p空間より広い弱L^p空間実補間空間の根底にある実補間定理ハーディー-リトルウッドの極大関, L^p空間における分数階積分の評価式であるハーディー-リトルウッド-ソボレフの不等式, L^pにおける導関数の評価式であるソボレフの不等式やGagliardo-Nirenbergの不等式があるL^p空間については準ノルムの他にノルムも与えていてバナッハ空間としているのはいいと思う. S*によるソボレフ空間の定義があるが, L^p関数は緩増加超関数を定める)(L^p*(1p∞))(ことを思い出すと定義が理解できると思う.

大関数については「実解析入門」「古典調和解析」「ベゾフ空間論」も参考にするといい「古典調和解析」には実補間定理の他にこの先にもある特異積分作用素BMO空間そしてカルデロン-ジグムンド分解の解説がある.

5章では三線定理と複素補間定理を証明している. || fg ||_r || f ||_p || g ||_q を複素補間定理を用いて証明するその中で || fg ||_p || f ||_p || g ||_1 を用いているこれは自明ではないが「実解析入門」と「ソボレフ空間の基礎と応用」などにこの不等式の証明があるハウスドルフ-ヤングの不等式は実はヤングの不等式で前者は「新版 ルベーグ積分関数解析」にもあるこの章では複素補間定理における指数の代入が間違っている箇所が2か所あるので注意がいるシュレディンガー方程式L^p-L^q評価は「ベクトル解析から流体へ」も参考になる.

6章では, Fourier multiplierカルデロン-ジグムンド分解特異積分作用素を説明している. Carlson-Beurlingの不等式の証明は先ほど急にδが出てきたのと同じくらい論理が飛躍しすぎだと思うそしてヘルマンダー条件の証明で7章で述べるリトルウッド-ペーリー分解を用いているのは違和感を持った確かに7章の始めに定義が書いてありそれを参考にすればいいのだができるなら先の章の内容を使わずに証明して欲しかった前者の不等式でもこの分解を用いようとしているこれらは数学書としてどうなのかと思う「後に第7章で述べる」くらいは書くべきだと思った.

7章ではベゾフ空間リーベル-ゾルキン空間実補間空間について解説されている. φが球対称という仮定は外せるかもしれないφ, φΣ_(j) (φ_jφ). すると(斉次)ベゾフ空間や(斉次)リーベル-ゾルキン空間の定義の中の φ_j 直観で考えると fΣ(φ_j)とみて, fを簡単な関数に分解する役割を担うと分かるそしてsuppψ|ξ|2}. この4つの空間の定義はφψの取り方によらずwell-definedである. (以上4つは「これからの非線型偏微分方程式」「ナビエ-トークス方程式 クレイ懸賞問題のいま」「ベゾフ空間論」による. )

ところで多項式関数p(L^1)_locだからPD*を定めている変数φSとすればルベーグの収束定理によりpPS*を定めるそこでpS*とみている. (より精確には(L^1)_locの元は必ずしもS*の元ではない:多項式関数pは緩増加関数で, pφSL^1 ルベーグの収束定理を合わせてPS*が言える. )

斉次ベゾフ空間のノルムでは多項式関数の定める緩増加超関数の「ノルム」が0になってしまう. (「ナビエ-トークス方程式 クレイ懸賞問題のいま」によれば|| f ||0からsupp(F[f]){0}となり f 多項式関数. )

そこで関数空間論では多項式関数の成す線型空間 P⊂S*とみて斉次ベゾフ空間と斉次トリーベル-ゾルキン空間を商空間 S*/ の元により定義している斉次ベゾフ空間の定義にある (/{多項式})* は正しくはS*/Pである斉次トリーベル-ゾルキン空間の定義でも, fS*は正しくはfS*/Pである(「ベゾフ空間論」).

ベゾフ空間とソボレフ空間の包含関係を述べているがリーベル-ゾルキン空間とべゾフ空間・ソボレフ空間・ハーディー空間・BMO空間との包含関係については「ナビエ-トークス方程式 クレイ懸賞問題のいま」に書いてある他の関数空間との包含関係については「べゾフ空間論」も参考になる.

実補間空間について線型位相空間 X, Yに対してある線型位相空間Zがあって連続な埋め込み XZ, Yがあるとき, (X,Y)は両立組であるという両立組(X,Y)に対してある線型位相空間Zがあり連続な埋め込み XYZXがあるとき, ZXYの中間の空間であるという. XYZXYspan(XY)という意味で, XYを平面ベクトルとみて図を描くとこの定義は感覚的にも納得がいく.

実補間空間を「fS*に対して」定義しているが正しくは「fXYに対して」である. X, Yを含む最小の空間 Xのノルムは || f ||inf{ || u ||_X || v ||_Y | fuv, uX, vY }であり, X, Yに含まれる最大の空間 Xのノルムに || f |||| f ||_X || f ||_Y ; max{ || f ||_X, || f ||_Y }があるこれらは同値である.

(X_0, X_1)
の実補間空間の定義を直観的に言うと t0のときX_0のノルムに一致し, 0θ1, 0p∞, 0tを用意して, (X_0)(X_1)(X_0)(X_1)の「中間のノルム」を時間変数tと中間を意味させる指数θを用いて定義しそのt方向のL^pノルムが有限な空間として(X_0)(X_1)の実補間空間(X_0 , X_1)_(θ, p) が定義されている.

「中間のノルム」は, 0t<<1/2のときは X_0のノルムに近くなり, 0t1なら(X_0)(X_1)と「同値でより小さい」ノルムになり, t1のときに(X_0)(X_1)のノルムに一致し, t1ならば(X_0)(X_1)でのノルムと「同値でより大きな」ノルムを用意して,

それに0t1ならば, t^−θ1をかけて, t1ならば1をかけて, t1ならば 0t^−θ1をかけてそのL^pノルムを算出する前に有用な関数不等式に含まれることもあり非常に緩やかに増加する関数 log(t) の変化率 1/t をかけて値とその変化率をうまく調節してから算出したL^pノルムが有限な関数の空間として定義しているのだろう定義式でt1しかもpなら1点での積分はその点における被積分関数の値と考えられるから(X_0)(X_1)のノルムの定義式に等しくなる.

8章では関数の再配列それを用いた(L^p)(Ω)を拡張したローレンツ空間L^(p, σ)(Ω)を解説している. 1p∞  L^(p, p)(Ω)L^p(Ω)L^(p, σ)(Ω). ハウスドルフ測度による集合の計測は「実解析入門」「ルベーグ積分講義」「ルベーグ積分論」などが参考になる.

9章ではハーディー空間 ^p とそのアトム分解, BMO空間とVMO空間ハーディー-ソボレフ空間を説明している.

^pの定義はL^1関数として扱うφの選び方によらずにwell-definedである)(「これからの非線型偏微分方程式)(. L^1空間の近似単位元でもある軟化子 φ_λ については「実解析入門」「ソボレフ空間の基礎と応用」「偏微分方程式論」に解説があり参考になった. 1pならば ^pL^p であるだからかアトム分解については0p1の場合に限っている個人的には1pの場合のアトム分解にも興味がある. F(, s0, p1, σ2)=H^1となり^pL^pF(, s0, pp, σ2)であるからこれらを包括して「ベゾフ空間論」が詳しそうである.

(
^1)*BMO, (VMO)*=H^1を示しているがここではハーン-バナッハの定理とリースの表現定理を用いている関数解析の多くはない出番だと思う.

BMO
空間については定数関数のBMOセミノルムが0になり, BMOセミノルムが0となる関数は殆んど至る所で定数関数となるがここでも他の資料でも, (L^p)_locを定数関数の空間で割ることはしていないバナッハ空間にする必要がないからなのであろうか?

10章からはこれらの諸論を基に第12章と第13章を除いて独立に書いてある.

10章では分数冪ラプラシアンに対するハーディー空間によるL^p-L^q型評価を述べているここから線型作用素の生成する半群の理論が表面的に使われる.

2
次元消散型準地衡流方程式 (∂_t)ωκ((−△)^(θ/2))ω(u▽)ω0;u▽^((−△)^(−1/2))ω により分数冪ラプラシアンを導入しているこれが渦度ω(t)rot(u(t))を用いた2次元ナビエ-トークス方程式(∂_t)ω−△ω(u▽)ω0;u▽^((−△)^(−1))ω (κも指数の分母も1としてθ1としたもの)と類似の表現をしているのは非常に面白いここでは前者の方程式の適切性の概要を述べた後 (∂_t)u((−△)^(θ/2))uの初期値問題を扱う私としては流体力学の方程式として前者の方程式にも興味がある.

11章では古典停留位相法と波動方程式L^p-L^q評価の解説に充てられている関数空間の原子であるL^p空間がここまで役立つとは・・・意外でもありおどろきでもある.

12章ではシュレディンガー方程式波動方程式S-B評価を述べているシュレディンガー方程式波動方程式に許容指数対を定義している13章はその続編と言える私の考えでは初学の読者のためにも著者の前置きの通りにも, 13章の分量を超関数と半群に割くべきだと思う.

14章では熱方程式の最大正則性原理を解説している実補間, L^p-L^q型評価, S-B評価を巧みに用いているまさに実解析的である初めに抽象的な発展方程式の話があるので私としてはそういう話も多く書いて欲しかった.

15章では準備のための非線型熱方程式とナビエ-トークス方程式の適切性を解説している.

ここでもL^pヘルムホルツ分解を暗黙のうちに用いているこれは前もって解説をするべきだと思うこの分解により, uの存在が言えればもうひとつの未知関数の存在が言えるゆえに一般には作用素P:L^p→(L^p)_σ から定まるストーク作用素 A−P△ により (∂_t)uAuP((u▽)u)と変形して解析されている.

ナビエ-トークス方程式については「ナヴィエ-トークス方程式の数理」と「ナビエ-トークス方程式 クレイ懸賞問題のいま」「Navier-Stokes方程式の解法」も詳しいなお本書では弱解の定義式で誤植により右辺の符号が正しいものと逆になっていることには注意がいる弱解の定義式ではuu(s), φφ(s)と書くとよい1章と同様にAが生成する半群(の元)e^(−At)と書いているが線型代数に従ってe^(−tA)と書くべきだろう.

15章にあるナビエ-トークス方程式の弱解の定義式について内積|)と書くとこのように考えても同値である:

(u_0 | φ(0))
∫_[0, T] (−(u(t) | (∂_t)φ(t))(▽u(t) | ▽φ(t))(u(t)▽u(t) |φ(t))) dt

(
著者小薗岡本)(抽象発展方程式の弱解の定義式に沿ったやり方本文と似ているこの方程式の場合は好ましくない)

 

(u_0 |φ(0))∫_[0, T] (−(u(t) | (∂_t)φ(t))−(u(t) | △φ(t)))((u(t)▽)u(t) |φ(t)))) dt

((
柴田-久保)(非線形偏微分方程式189頁を参考にした)

(u(t) |φ(t))
(u_0 |φ(0))∫_[0, t] (−(u(τ) | (∂_τ)φ(τ))−(u(τ) | △φ(τ)))((u(τ)▽)u(τ) |φ(τ)})) dτ

((
柴田抽象発展方程式の弱解の存在定理に沿った定義私はこれが最も好ましいと思う理由は私の「これからの非線型偏微分方程式」のレビューにある)

この分野の多くの研究者の悪い習慣だが u▽u は本来は (u▽)u と書くべきである. u  ^m 値なら▽u を無理に定義してもそれが ^(m^2) になるか, m次正方行列になってしまうからであるこれもふまえて私は上述に整合性を保たせようとしている.

17章ではシュレディンガー方程式KdV方程式について, L^pを用いた適切性の話が書いてあるシュレディンガー方程式については12章で述べた許容指数対というものを使っている. S-B評価を多用しているこの本ではKdV方程式やその線型化のエアリー方程式の扱いが少ないのが残念である私の高校の恩師はKdV方程式について少し研究したようだが特に何か大きな話は聞けなかった.

18章では私が興味を持つ波動方程式の適切性を説明している.

19章では熱方程式と波動方程式が隠れている消散型波動方程式 ((∂_t)^2)u−△u(∂_t)u(|u|^α)u が主役であるまずこの方程式とそれに関係が深い (∂_t)v−△v(|v|^α)v の適切性の概要を述べて中盤で再び ((∂_t)^2)u−△u(∂_t)u(|u|^α)u の適切性を述べている. 3次元消散型波動方程式 ((∂_t)^2)u−△u(∂_t)u0の解は, t→∞とすると (∂_t)u−△u ((∂_t)^2)u−△uの解の和になると述べられているこれは実に面白い.

20章はあとがきである.

個人的には数学的にも面白い波動方程式と類似の性質を多く持つらしく見かけも似ているクライン-ゴルドン方程式 ((∂_t)^2)u−△umu((|u|^(p−1))u, シュレディンガー方程式波動方程式の連立系であるZakharov方程式 i(∂_t)u△uuv; ((∂_t)^2)v−△v△(|u|^2), シュレディンガー方程式とクライン-ゴルドン方程式の連立系であって中間子モデルを扱う湯川カップリングモデル i(∂_t)u△uuv; ((∂_t)^2)v−△vmv−|u|^2 に興味がある研究してみたかった.

[付録]

supp(f)
閉集合なのはその補集合が開集合であることを言えばよい.

x
supp(f)でないとすると, xの開近傍U(x)がとれてsupp(φ)U(x)となる任意の関数φに対して〈f, φ〉=0とできる. U(x)に含まれる任意の点yをとると, U(x)yの開近傍だから, U(x)をうまくとれば必ずysupp(f)とはならないようにできるゆえに U(x)supp(f)^c となり, supp(f)^cは開集合だからsupp(f)閉集合である.

f
が関数のときAclosure of { x | f(x)≠0 }とする.

y
Aでないとするとyの開近傍U(y)がとれて任意のzU(y)に対してf(z)0となるよってsupp(φ)U(y)である任意の関数φに対して

f, φ〉=∫ f(x)φ(x) dx 0

であるからysupp(f)ではないすなわちsupp(f)Aである.

次にyAとしてyの任意の開近傍U(y)をとる. U(y)Azf(z)≠0となるものが存在する. f(z)はいっぱんには複素数だが実部と虚部に分けて考えればよいので, fzの近傍で実数として一般性を失わないよってfの連続性よりzのある近傍V(z)xf(x)0f(x)0. ゆえにsupp(φ)V(z)である任意の関数φ0でないものに対して

f, φ〉=∫ f(x)φ(x)dx ≠0

だから, ysupp(f)であり, Asupp(f)が成り立つ.

これらを合わせてAsupp(f)である.



ご参考になれば幸いです。(2017323, 202228日最終推敲)

溝畑氏の「偏微分方程式論」についてはこちらを参照されたい:https://pdem.hatenadiary.com/entry/36613662

藤田-黒田-伊藤「関数解析」についてはこちらも参照されたい:https://pdem.hatenadiary.com/entry/36870412

超関数の定義の背景:https://pdem.hatenadiary.com/entry/2020/05/10/202341

ナビエ-トークス問題について:https://pdem.hatenadiary.com/entry/2020/10/10/115841

北田先生の「新訂版 数理解析学概論」についてはこちら: https://www.amazon.co.jp/%E7%B7%9A%E5%9E%8B%E4%BB%A3%E6%95%B0/dp/476870462X/ref=cm_cr_srp_mb_rvw_txt?ie=UTF8