PDEMのブログ

新訂版序文の人のブログ

数学における3つの未解決のミレニアム懸賞問題速習(2020.10.26加筆)

この記事ではクレイ数学研究所から100万ドル(約1億円)の懸賞金がかけられた7つのミレニアム懸賞問題のうち3つについて話す.

1.リーマン予想

これは局所的なリーマンゼータ関数, すなわち変数を複素数sとし実部Re(s)>1の範囲で定義された, 自然数n≧1のs乗の逆数の無限和を関数値とする関数

Z(s)=Σ(n=1→∞)(1/(n^s)) (Re(s)>1)

複素平面全体に解析接続して得られる大域的なリーマンゼータ関数ζ(s)についての予想である. f:id:PDEM:20201026083920j:plain

解析接続とは簡単に言うと, 複素変数の関数としての微分可能性を保ちながら定義域を拡大することである. 実変数の関数では例えば座標平面に限られた範囲で描かれた関数のグラフを滑らかに伸ばすことで微分可能なまま定義域を自由に拡大できる. しかし複素変数の関数では微分可能性は非常に厳しい条件であり, 自由に拡大することはできない.

ζ(s)はZ(s)とは別物の関数で, ζ(s)は「自明な零点」として負の偶数を持つ. すなわちζ(s)は負の偶数で関数値が0になる. そして「自明でない零点」つまり負の偶数以外でζ(s)の値を0にする複素数sは全て

Re(s)=1/2

を満たすであろう, というものがリーマン予想である.

現在ではこれが正しいことを示唆しているかのような結果がいくつも出ている. 例えば, リーマン予想を満たすようなζ(s)の自明でない零点sは無限個存在することが知られている.

たまにZ(s)とζ(s)を意図的に混同して

1+2+3+…=−1/12

ということから解析接続を似非科学のように見たり意味のわからないことを言う人がいるが, 正しくは局所的なリーマンゼータ関数Z(s)と大域的なリーマンゼータ関数ζ(s)は別物なので,

1+2+3+…=∞

ζ(−1)=−1/12

である.

リーマン予想素粒子物理学と関係があるらしい.

2.ナビエ-ストークス方程式の解の存在と滑らかさ

この方程式は流体力学の基礎となる非線型連立偏微分方程式である. u(t, x, y, z)をxyz空間の或る領域の点と実数(時間)t>0を変数とする空間ベクトルに値をとる関数(いわば流体の速度ベクトル), p(t, x, y, z)を定義域は同様の実数値関数(いわば流体に加わる圧力)とすると

∂u/∂t+(u・▽)u−△u+▽p=0

div(u)=0

f:id:PDEM:20201026203136j:plain

という連立方程式である. ただし数学ではスケール変換で物理定数の絶対値を全て1とするのでそれに従った. 外力を考慮することもある. uの偏微分は各成分ごとに行うので, これは未知関数が3+1=4個(uの3つの成分とp)の方程式である.「ナビエ-ストークス方程式の解の存在と滑らかさ」は, 適当に初期値の属する関数空間と未知関数の属する関数空間を定めたとき, 任意の初期値に対して, 物理学的に意味のある解が存在するか, すなわち, ただ一つで, 何回でも微分可能で, 時間変数に制限がなく, 初期値の連続な変化に応じて解が連続的に変化するもの, が存在するかという問である. 実は大変都合が良いことに, uの存在が言えれば自動的にpの存在も言えることが知られている. これは超関数を使うとナビエ-ストークス方程式を未知関数がuだけの方程式に書き換えられること, 或いは関数解析的方法により未知関数の属する関数空間をuの成す空間と▽pの成す空間の直和に分解でき射影作用素によりuだけの方程式に帰着できることによる.

難しい話が続いたが, 数学では解を持たない方程式や解が無数にある方程式はいくらでもある. 常微分方程式でも非線型方程式は初期値によって解の存否や一意性は異なってくる. 偏微分方程式については定数係数線型方程式でも解が存在しない例がある. そもそも非線型偏微分方程式では解を計算で求めることは殆んど不可能である. そこで解の存在が示せれば, その方程式を近似して解くことの論理的背景かつ近似した方程式の解の存在の保証となる. つまり非線型偏微分方程式を線型偏微分方程式で近似して計算などにより解を近似することが机上の空論ではなくなる. ここでは偏微分方程式ではなく簡単な非線型常微分方程式と中学数学程度の代数方程式で, 方程式の解の一意性が成り立たない例や解が存在しない例を説明しよう. yをxの微分可能な実関数とする. 微分方程式

dy/dx=2√y

の解y=y(x)は変数分離法によりCを任意定数として

y(x)=x^2+2Cx+C^2

ここで初期条件y(0)=0を満たす解は

y(x)=x^2

が得られるが, 他に変数分離法を使う前に排除した定数関数

y(x)=0

があり, 初期値問題の解の一意性が成り立たない. また

x=√y−C

であるから, 例えば初期条件y(0)=−1を満たす解y(x)は存在しない. ゆえに初期条件によってはこの微分方程式は解も持たない. 以下, 微分を知らない人のために代数方程式で説明する. xとyを未知数とする.

0x=1

の解は存在しない. 仮に両辺を0で割ることができたとしてx=1/0が数とする. 0にどんな数かけても0であるという定理があるので, x=1/0を左辺に代入すると0=1となってしまい普通の数学に矛盾する.

0x=0,

2x+3y=4

4x+6y=8

の解は無数にある. 下の二元一次連立方程式については, 4x+6y=8が2x+3y=4と同じなので, tを実数として

(x, y)=(t, (4−2t)/3)

の形の実数の組が全てこの連立方程式の解となるからである. これはx=tとしてyについて解いて得られる. 図形的に言うとxy平面の2つの直線がたまたま一致し交点が無数にある状態である. また, 連立方程式

x+5y=6

x+5y=7

の解はxとyについてどんなに数を拡張しても存在しない. 連立方程式は複数の方程式を「かつ」で結びつけたものだから, 6=7が得られるがこれはありえないからである. 図形的に言うと2つの直線が平行であり交点が存在しない状態である.

話が逸れたが, 物理学では, 微分方程式の解は, 簡単に言うと「ただ一つ」で「微分可能」で「時間大域的」で「初期値の連続な変化に順応する」ようなものに物理学的意味がある. 短時間で値が発散する, すなわち「爆発」するナビエ-ストークス方程式の解の存在も知られているが, 時間変数に制限の無い解の存在はまだ知られていない. ただ, 日本人数学者の藤田と加藤が, ほぼ解決に近い結果を出している.「藤田-加藤の強解」が時間大域的であることが証明されたら, このミレニアム問題も解決する. ナビエ-ストークス方程式は人工血管や航空機や気象予測など流体が関わる多くの場面で使われている.

3.ヤン-ミルズ方程式の存在と質量ギャップ問題

これは主張に物理学が含まれるため完全な理解は私もできていない. しかしヤン-ミルズ方程式についてはやっと理解できたので, ヤン-ミルズ方程式についてだけ解説する.

まず微分形式というものを大雑把に説明する. 0次微分形式とは関数である. 1変数xの1次微分形式はf(x)dxの形の式が一例である. 2変数(x, y)の2次微分形式はf(x, y)dxdyの形の式が一例である. 3変数(x, y, z)の3次微分形式はf(x, y, z)dxdydzの形の式が一例である. 積分されるものは関数ではなく微分形式と考えることがある. また置換積分の際にいわゆる「dx=g'(t)dt」がよく現れるが, これも1次微分形式である.

xの微分可能な関数f(x)がx=aで極値をとるときf'(a)=0が成り立つ. aをf(x)の臨界点という. これは関数や微分形式を変数とする関数, つまり汎関数についても同様である. ヤン-ミルズ方程式は, ゲージ理論においてヤン-ミルズ汎関数の第一変分を0にする或る種の微分形式が満たす偏微分方程式である. 少しだけ詳しく言うと, 或るベクトル束(多様体の一種)Eに値をとる1次微分形式の「共変外微分」(微分作用素の一種)Dの随伴作用素をD*(Eに値をとる2次微分形式に対する微分作用素)とし, Eの接続(共変微分)から定まる接続形式から定まる曲率形式(Eに値をとる2次微分形式)Ωに対する偏微分方程式

D*Ω=0

である. f:id:PDEM:20201026091403j:plain

逆に曲率形式から接続形式が, 接続形式から接続が定まる. ヤン-ミルズ方程式を満たす曲率形式から定まる接続が, ヤン-ミルズ汎関数の臨界点である. Eが具体的に何かは微分幾何の詳しい知識が必要なので, ここでは或る多様体だと認識して頂きたい.

「ヤン-ミルズ方程式の存在と質量ギャップ問題」については私も詳しくは知らず, またリーマン予想やナビエ-ストークス方程式については数々の数学者たちの詳しい研究成果や本質的な具体例まで紹介したかったが, なるべく初等的な解説にしたかったので, このあたりにする. いつか日本人からミレニアム問題の解決者が現れることを願う.

微分幾何における「留数」と「留数定理」

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曲面Mの点pの近傍で定義されたベクトル場Xの点pにおける指数の定義式
(γ_p)(X)=(1/2π)lim_(Γ→p)∫_Γ g(dξ, ξ^⊥)

or (γ_p)(X)=(1/2π)∫_C dθ

複素解析における留数の定義式
Res(f, a)=(1/2πi)∫_Γ f(z)dz
に, オイラー-ポアンカレの定理
Σ_i γ_(p_i)(X)=χ(M)
は留数定理の式
∫_γ f(z)dz=2πi Σ_i Res(f, a_i)
によく似ている.

2年前に書いた超関数超入門

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厳密な定義より直観的なわかりやすさを優先したので多少論理に無理がある箇所があるのは許していただきたいが, 超関数(distribution)を連続線型汎関数と定義する理由をデルタ関数を用いて説明した. 超関数はデルタ関数とそれに関する演算の厳密化が発端なので, デルタ関数から超関数を説明するのが自然だし, 実際説明もしやすい. 連続性を課す理由, 線型汎関数と定義する理由もわかりやすいと思う. 多様体の理論も極めれば偏微分方程式の解の存在問題になり, 多様体上の超関数(カレント)が用いられている.


超関数に関する過去の記事も参照されたい:

https://pdem.hatenadiary.com/entry/2019/08/16/002059 (ナビエ-ストークス方程式の適切性について)


https://pdem.hatenadiary.com/entry/2019/12/18/015341(偏微分方程式の弱解の構成に関する考察)

偏微分方程式の一意解の存在について

2016年1月31日に偏微分方程式の一意的な解を構成する方法を予想した.

全てのヒルベルト空間Hの双対空間H*はリースの表現定理によりHと線型同型かつ距離同型ゆえにH*=Hと見なしている上に, Hとしてソボレフ空間を選べばH*は超関数の空間である(後述)から,

与えられた偏微分方程式(P)に対して適当な可積分性や可微分性を定めたヒルベルト空間Hで(P)の解u∈Hが存在しそうなものを用意して, 適当な超関数としての連続線型汎関数d∈H*を定義しておいて, リースの表現定理により∃!v∈H, ∀φ:test function,〈d, φ〉=(v|φ) と表現するときに,

vが(P)の解 u=v であることを言えたら, ∃!u∈H, (P)の解を構成できたことになる. H*=Hだからuをdと同一視できるのでuは超関数の意味での解でもある.

または, 共役指数 1<p<∞, q, 1/p+1/q=1 に対してL^p空間の連続線型汎関数の表現定理を用いて, 開集合Ω上の超関数∂∈D*(Ω)⊃(L^p)*(Ω)としての連続線型汎関数∂∈(L^p)*(Ω)を定義しておく.

L^q(Ω)=(L^p)*(Ω)は, ヒルベルト空間Hと整合性を保たせたいなら, Hは適当な実数sによる可微分性を課してp=2としたソボレフ空間H=W^(s, 2)(Ω)⊆L^2(Ω)=(L^2)*(Ω)⊂D*(Ω)となるから, より広い関数空間L^q(Ω)=(L^p)*(Ω)⊂D*(Ω)の中で(P)の解∂∈L^q(Ω)を構成できるかもしれない. (ただし, 計量による性質:空間の直交分解可能性, 実数値の内積で任意の2つの元の成す角を定義できること, 正規直交基底の存在, などは失われる. )

以上の全ての関数空間Xに対して, D(Ω)がXで稠密であり, 関数列{φ_n}⊂D(Ω)のD(Ω)に入っている位相による収束を仮定すると{φ_n}がXに入っている位相により収束するので, ∀f∈X*⊂D*(Ω), fの連続性をD*(Ω)の位相により定めれば, X*は超関数の空間になる. (P)の解u∈X*を構成できて, 例えばX*=Xだとかuが或る程度滑らかなら, u∈Xにもなりうる.

現実にはuに数理科学や幾何学などから要請される, 例えば, 有界性u∈L^∞(Ω)や可積分性と可微分性u∈W^(s, p)(Ω)およびΩの境界の形状によるuの性質そして非斉次性などがXに反映され, (P)の解u∈X*(≠X)の構成は殆んど多くが困難なのだろう.

新井仁之著「ルベーグ積分講義」について

ルベーグ積分講義 面積0の不思議な図形たち」について

(Amazonに掲載されていたレビュー)

 

この本の題名は, 本屋に陳列する都合上, どうしても「ルベーグ積分」を含む語句を用いないといけない, と著者は見越していたのだと私は考える. そうしないと本屋の店員は分野の仕分けが難しいだろう. 私も何回か混在した仕分けを見てきた. 柴田-久保「非線形偏微分方程式」も, バナッハ空間値の実解析と解析的半群の要説が前半にある以外は, ミレニアム問題のナビエ-ストークス方程式とストークス方程式の専門書である. こちらは正確に仕分けされていた.

 

普段の解析学では, (N次元実数空間)ユークリッド空間R^Nでのルベーグ積分を道具とする.

 

例えば, 表現論に不可欠な群の上のハール測度による積分, あるいは, 任意の距離空間に対して使用可能なハウスドルフ測度による積分は, 実は必要なく現れなかった. 関数解析で使われる, ルベーグ測度と直結しているボレル測度あるいはスペクトル測度を基にする積分を自己共役作用素のスペクトル分解などに使う他は, 普段は, ルベーグ測度によるR^Nにおけるルベーグ積分で充分であり, 自己共役作用素をスペクトル分解するときの測度はルベーグ測度によりすぐに作られる.

 

付録で, 微分積分法を学んだ方なら, 本文と付録全体を理解できるように, ε-論法, 集合, 位相, などの事項は明確に精確に補充と説明がある. それらだけではなく, 数学の理論上不可欠な, (C_0)^∞ (R^N上で台(※1)がコンパクトで何回でも微分可能な関数たちが成す線型空間)がL^p空間の中で稠密(※2)であることを証明込みで, さらに, ルベーグ測度の(「高校数学C」にある「行列と一次変換」で学んだ)平行移動不変性, 回転不変性, 裏返し不変性と, ルベーグ積分の変数変換まで収録されている.

 

R^Nの場合だけでも充分有用であり汎用性は高い. 平行移動不変性は問または章末問題に回されることが多く, 暗黙の了解で(ルベーグ測度による積分をする時に)既知とされ使われることも, 使うことは明記するが証明が無い場面も, 度々ある.

 

積分に入る手前までは, 感覚でも分かるようにR^2上のルベーグ測度を要説している. そうすると, 上記3種の運動は, 当時の高校数学(高専数学)で学ぶ「行列と一次変換」により表現される. ならば, 微分積分の他には付録で補って行けば, この部分も「数学に興味がある高校生も参考になる」(理解できるかできないかではなく参考になるかならないか)という序文に問題はないはず. 変数変換が証明込みで納められた本は, 和書なら他に無い.

 

ルベーグ測度の構成には次元Nが任意の場合でも同じ方法で通用する. 積分に入る前で, 任意次元の場合にも得られる全ての結果を, 復習と総括を兼ねて「d次元」として再掲しているが, 単に2をdと書き換えるだけで済むのである. しかも, 包括して復習すれば, 先に進む補助にもなるだろう.

 

ルベーグ測度の他に全ての測度を取り扱える抽象論が無いから駄作, と言う人も居るが, 付録の終わりには, 抽象的な測度論と(測度論による)抽象的な積分論も定義と定理が明確に紹介されている. 理解しやすい形で述べている最小限の事項に欠陥は無い. 具体例には, ルベーグ測度とハウスドルフ測度だけではなく, 数え上げ測度まで明示している. それは, 本質にルベーグ測度しか扱わない本より詳しい所だろう.

 

しかも, 積分の順序を自由に変えられる種々の定理は, 直積測度空間の構成をしなくても直接証明できているのだ. 直積測度空間の構成には, 抽象的な測度論を経由するが, それは, この本の立場から観ると, 長くて本論から外れる. (フビニの定理, トネリの定理, フビニ-トネリの定理, これらの名称は, 実は, 明確に区別されていない. フビニの定理をトネリの定理と合わせて名付けたり, 合わせる所でフビニ-トネリの定理と名付けない時もある. トネリの定理はフビニの定理を適用し得るか否かの判定法として紹介されていたり, など. )

 

任意の集合に理論を構築できる抽象的な測度論も, 解析学の道具を生み出すのだが, R^Nの位相的性質(任意の有界閉集合はコンパクトであること, 任意のコンパクト集合は有界閉集合であること, リンデレフの定理:任意の集合の任意の開被覆は可算部分被覆を持つこと, 任意の開集合Ωに対して ω⊂⊂Ω となるωが存在すること), R^Nの位相から得られるルベーグ測度の正則性(平行移動不変, 内正則, 外正則, 可測集合はG_δ集合と零集合の差あるいはF_σ集合と零集合の和で表されること, など)のほうが, 解析学における多くの場面で重要視されている.

 

内容としてはR^N上の「図形論」が主体なので, 「測度の使い方」を詳しく知るには最も好適な本である. 平行移動, 裏返し, 回転, という3種の変換に対する不変性の証明も広く知られてはいない. 感覚的にも理解しやすい可測性の定義(「外側からの近似値=外測度=内測度=内側からの近似値」 と, カラテオドリによる定義(通常の定義) 「可測であってほしい集合の外測度は, 他の集合を任意に持ってくると, その集合と交わっている部分の外測度と, 交わっていない部分の外測度のふたつに分けられること」 が同値であることを見越して, 前者で可測性を定義している点は, いい工夫だと思う.

 

そもそも序文から物語が始まり, 面積という概念を小学生の数学と国語辞典から始めて, 面積という概念に翻弄されてきた数学者たちの歴史に倣いながら予備知識も自然に入れて, 本論が始まる前に, ルベーグの思想「長さ, 面積, 体積とは何か?」に至るまで, 高校生と社会人に, 証明は抜いても2回講演して, 面白く楽しく感じさせた数学を, 初歩から理解させようとする本は他に無い.

 

測度とは, 図形の性質を数値で表現できるか否か, 数値が測定できたら何が言えるか, を説明する方法である.

 

ディリクレが指摘した「関数」も含めて, 関数の概念を確立させようとする動きが起きた.

 

あらゆる関数を積分できるようにしようと, ルベーグは, 有界な集合上の有界関数のグラフを横に細く切って, それぞれの部品に入っている関数値を与える点の集合の長さを測ろうとすると, 長さを測定できる図形は, リーマン式で測定できるものより, 非常に複雑なものが多いことを知った. リーマン式で測定できる図形と混在することも分かった.

 

しかし, 既に「自明」だが正当化されていない「測定値」と, 既成の数学で「正確な値」を算出できる「測定方法」と, 測定値を「算出する方法」が確立されていない「図形」を, 全て総合的に取り扱えるように創られた理論が「測度論」である.

 

図説はむしろ多く用意してあるはず. 測度論それ自体は定量的なものであり, 読者が想像するほうが普通なのだ.

 

任意の図形と変形する図形の両方に如何なる場合でも必ず意味を持つ不等式に対して, その意味を精確に表現できる図形は無い.

 

例えば, 複素解析の本では「ジョルダンの曲線定理」を証明しないほうが当たり前なのだ. さらに, 高木関数のグラフは, 無限回の操作を有限回で打ち切り, 近似している「曲線」をコンピューターで描けるのが限界である.

 

だから, 下手に図が多いと, ルベーグ測度は本当に必要か疑問を抱かせるだろう.

 

「長さ」「面積」「体積」とは何かについての洞察を「ハルナック集合」という特殊な集合も持ち出して, 図形の面積の測り方の例示から始まり, 積分論がひと段落すると, 「図形論」になる. カントール集合と悪魔の階段という知る方も多い図形から始まって「掛谷集合」「ペロンの木」「ベシコヴィッチモンスター」「面積を持つ曲線」など, 広く知られていない多種多様な図形が出てくる. これらの図形の性質を調べるためには, ハウスドルフ測度とハウスドルフ次元が必須で, さらにはフーリエ解析と根強い関係があることを知らしめる. 付録にも「図形論」として「図形の列の収束」という珍しい概念と定理と証明がある.

 

本文にも2箇所, ルベーグ測度を「或る意味で改良している」ハウスドルフ測度と, ルベーグ測度の(次元から定まる)定数倍による違いを具体的な式で提示する, 珍しく貴重なことが明記されている.

 

最終章では「掛谷予想」(「掛谷問題」)とフーリエ解析の関係について述べてあり, ぜひ取り組みたく思った時期もあった.

 

「図形論の和書」として立派だと言える.

 

同時高校生だった私も, かなり独特に感じて, 読んでいて楽しかった.

 

未熟だった16歳の私は, 実解析を学ぶために, この本も他の数冊も序文から読んでいた. 証明を流し読みしたり抜いたりしても概要は把握できた. 証明を読むか読まないか, それは読者が決める事なのだ. 最初から全て証明を読んで数学を理解してきた数学者はいない, と言う複素解析の専門家は, 証明は無理に読まず話の流れを感じて全体像を納得してから, 読まなかった証明と読めなかった証明に挑めばいいと, 序文に記している.

 

(※1):与えられた連続関数(φと書こう)の値が0にならないR^Nの点すべての集合 { x∈R^N | φ(x)≠0 } の閉包 supp(φ) ( { x∈R^N | φ(x)≠0 } を含むR^Nの全ての閉集合のうち最小の閉集合;全ての境界点を付け足す;全ての集積点を付け足す)

 

(※2):任意のL^p関数(L^p空間に属する任意の関数)は, 台がコンパクトで何回でも微分可能な関数の集合 (C_0)^∞ から成る関数列の極限として表せること

 

(すなわち, 任意の実数に対して, それに収束する有理数から成る数列が存在すること, さらに換言すると, 任意の実数に対して, それにいくらでも近い有理数が存在すること, これらを関数の世界で(位相空間の世界で)表現する用語)


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数学でいう数とは何か (2019.12.6.加筆訂正)

以前の記事『数とは何か』と『「数とは何か」における用語について』の内容を取捨選択しまとめて, 再論してみようと思う. 以下の記述は『新訂版 数理解析学概論』による. この本については文末に付すリンク先にあるAmazonのレビューも参照されたい.

以下, かなり長くなるが, 段階ごとに読むか時間が充分ある時に読んでみていただきたい.

代数学では, ほぼ全ての数学の分野が
・集合
・その集合に定まる数学的構造
・集合と集合の間の数学的構造を保つ写像(要素の間の構造を保つ規則的な対応)
によって記述されている. このことは現代数学を学ばれている方々には周知の事実であろう.

『数とは何か』を考察するためには, そもそも現代数学において数学的概念がどのように定義されているかを見直さなければならない.

代数学では, ほぼ全ての概念が, おおむね
・何らかの方法によって構成されたか存在を仮定した集合の要素
・何らかの定理によって存在が保証された何らかの集合の要素
・集合と集合の間の然るべき性質を持つ写像
によって定義されている. ここでは, ひとつめとふたつめの考え方に従うことにする.

誰もが無理数を学んだ時に『循環しない無限小数は本当にあるのだろうか』と思わなかっただろうか. 高校数学の範囲内で√2が無理数であることは証明できても√2が実数であることは証明できない. ひとつの理由は『数』が無定義だからである. また, 複素数を学んだ時に虚数単位iの導入によっては複素数が受け入れ難い概念ではなかっただろうか. これもひとつの理由は『数』が無定義だからである. しかし『数』を厳密に定義することは, 以下にも述べるようにひとことで表せる物ではない. 高校数学の検定教科書と学習参考書には, せめて定義の不備と数の定義の難しさを明記するべきであり, 内容によってはコラムで紹介すべきであろう. しかし数学教育の話は今回はさておき, 数とは何か, 私が考えた数学的な答えを書いていこうと思う.

まず集合を厳密に定義しなければならない. しかしそれを完全に述べるより本質的な考え方のみを述べるほうがわかりやすいであろう.

集合は, 直観的に言うと『範囲が明確な物の集まり』である. しかしこの定義からは集合論においていくつもパラドックスが発生した.『普通の数学』をする上では困らないものだが, 今回はこのパラドックスに関わる公理と概念を必要とする. つまり, ここでは集合は『集合という概念が満たすべき性質を挙げたいくつかの前提を認めることにして』公理的に(いくつかの性質を満たす物として)定義された物としたい. 有名なものは, ZF公理系とそれに選択公理を付け加えたZFC公理系, およびZFC公理系に類の公理を最初に付け加えたものと同値なGB公理系である. 話を簡単にするためにZFC公理系について, その中からいくつか抜き出して, 本質にある考え方を述べてみよう.

・要素が同じ集合は等しい(外延性公理)
・要素を持たない集合が存在する(空集合の公理)
・ふたつの物だけから成る集合が存在する(非順序対の公理)
・任意の集合族(要素が集合である集合)に対してその全ての要素の和集合が存在する(和集合の公理)
・無限集合は集合である(無限公理の本質)
・任意の写像について定義域の像は集合である(置換公理の言い換え)
・任意の集合は自分自身を要素として持つことはない(正則性公理の本質)
・任意の集合に対してその全ての部分集合から成る集まりは集合である(冪集合の公理)
・任意の集合族に対してその全ての要素からひとつずつ要素を選び出して作った集まりは集合である(選択公理

細かい説明はあえてしないが, これらを認めると, 例えばふたつの集合または集合族の全ての要素に対する和集合の存在や共通部分の存在あるいは直積集合の存在や点列の構成などの正当性が保証され, 現代数学において暗黙のうちに前提としている集合に関する操作が正当化されるのである.

次に数とは何か考えるために必要な数学的構造の説明をしよう. 以下でも厳密性は追及しない.

空でない集合Sに関係Rが定義されているとは, Sの任意の要素 a, b に対して
aとbには関係Rがある(aRbである)か, aとbには関係Rはない(aRbではない)か
のどちらか片方が成り立つときをいう. 例えばSを平面図形(或る平面上の点の集合:線分・直線・三角形・四角形の周と内部の和集合・円板など)全体の集合Pとするとき, Pにおける関係として相等関係=や合同関係≡あるいは相似関係∽や包含関係⊆がありうる.

空でない集合Sに定義された関係Rが順序関係または単に順序であるとは, Sの任意の要素 a, b, c に対して
aRa(反射律)
aRb かつ bRa ならば a=b(反対称律)
aRb かつ bRc ならば aRc(推移律)
を満たすことである. 例えば上の例でPにおいて包含関係⊂は順序関係である. また後述の自然数全体の集合Nにおいて大小関係≦は順序関係である. 順序が定義された集合を順序集合という.

順序集合Sにおける順序関係Rが
aRb と bRa と a=b の少なくともどれかが成り立つ
ときRはSにおける全順序関係または単に全順序という. 例えばNにおける≦は全順序であるがPにおける⊆は全順序ではない. 全順序が定まっている集合を全順序集合という. またSを全順序集合とするとき, Sの任意の空でない部分集合が最も小さい要素を持つならば, Sは整列集合であるという.

ここで空集合の公理と外延性公理により一意存在が保証されている空集合{}を用いて自然数を直観的に構成する方法がある. 後の都合上この定義を選ぶ. よく知られたペアノの公理系で定義するとしてもZF公理系に従うことに変わりはない. これは非順序対の公理と無限公理を表に出すように書けば以下のようになる:

0={}, 1={0}, 2={0, 1}, 3={0, 1, 2}, ….

0∈1∈2∈3∈…, かつ任意の自然数 m, n に対して m∈n または n∈m または m=n が成り立つ. すなわちNの要素間の関係∈は推移的かつ全順序である. またNの任意の空でない部分集合は∈について最も小さい要素を持つ. 例えばNの部分集合{1, 2, 3, 5, 7}は∈について1が最小の要素である. これらはまさに順序数が持つ性質である:

空でない集合αが∈を順序関係とする順序集合であり, ∈がαにおいて推移的かつ∈についてαが整列集合であるとき, αを順序数という.

また先述の選択公理は次の整列可能定理と同値である:

任意の空でない集合は適当な順序により整列集合とすることができる.

整列可能定理を演算(和, 積, 定数倍, など)の定まった集合に適用するとき, この順序はその演算と整合性のある物とは限らず, また具体的に論理式で記述できるとも限らない. しかし整数全体の集合Zにも, 有理数全体の集合Qにも, 実数全体の集合Rにも, これらが整列集合となるような順序が定められるのである. そしてQの切断全体の集合とするRの構成は, 順序数の基本的な性質と並行しているのである. また任意の整列集合にはただひとつの順序数が対応しその整列集合と「順序同型」となる. Qの切断によるRの構成については『新訂版 数理解析学概論』のレビューにて言及しておいたのでそれを参照されたい. 複素数や数ベクトルが実数の組であることを考え, またこれらも物理量などを表す数と考えると, 結局, 数とは順序数と類似した概念またはその組と言えるのではなかろうか. 実数全体の集合Rは順序数のような物として構成できる. その要素つまり実数は順序数にはならないが順序数と良く似た性質を持つのである.

私の最近の研究でも, 物理量を表す数には必然的に実数が表れることがわかった. やはり順序数の概念が数とは何か答える上で重要なのは間違いないであろう:https://twitter.com/reviewer_amzn_m/status/995243777194246145 .

『新訂版 数理解析学概論』

(2018.8.19, 2018.10.2, 2018.10.8 一部加筆)

超関数と多変数複素解析

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どちらも
∀f on D ∃u on Δ⊂⊂D Au=f on Δ
という形をしている

ドルボーの補題の場合Dは多重円板でΔはDにおけるコンパクト集合でありAはディーバー作用素

偏微分方程式論の場合Dは相対コンパクトな開集合でΔはDで相対コンパクトな開集合でありAは定数係数線型偏微分作用素でfは台がコンパクトな超関数, uは超関数

書き込みした本は「多変数複素関数論を学ぶ」