順序集合と体の定義と距離空間とε-論法と有理数体の完備化による実数体の構成を既知として, 物理量を表す数は実数またはその組(複素数など)が妥当であると論理的に結論づけられた.
超実数など他のモデルが妥当である可能性は否定していないが少なくとも必然的に実数体は現れるということは言えた.
ベクトル場Xの点pにおける指数の定義式
γ_p(X)=(1/2π)∫_C dθ
は複素解析における留数の定義式
Res(f, a)=(1/2πi)∫_C f(z)dz
に, オイラー-ポアンカレの定理
Σ_i γ_(p_i)(X)=χ(S)
は留数定理の式
∫_γ f(z)dz=2πi Σ_i Res(f, a_i)
に良く似ていると感じた.
曲面Mの点pの近傍で定義されたベクトル場Xの点pにおける指数の別の定義式
(γ_p)(X)
=(1/2π)lim_(Γ→p)∫_Γ g(dξ, ξ^⊥)
も複素解析における留数の定義式
Res(f, a)=(1/2πi)∫_Γ f(z)dz
に, オイラー-ポアンカレの定理(定理4.8.3)
Σ_i γ_(p_i)(X)=χ(M)
は留数定理の式
∫_γ f(z)dz=2πi Σ_i Res(f, a_i)
によく似ていると感じた.
参考文献:
Xを集合, μ*をXの冪集合における外測度とするときA, B⊆Xに対して
μ*(B\A)=μ*(B)−μ*(A)
が, Aがμ*-可測で測度有限かつA⊆Bなら(Bがμ*-可測でなくとも)成り立つのではないか?と考えたが, 証明ができた.
実際, 結論から言うと, 北田均「新訂版 数理解析学概論」383ページ目や, 谷島賢二「新版 ルベーグ積分と関数解析」67ページ目と96ページ目で暗黙の了解でこれを用いていると考えられる記述がある.
[証明]
Aがμ*-可測であるから∀C⊆X,
μ*(C)=μ*(C∩A)+μ*(C\A).
C=Bとし, A⊆BならばB∩A=Aであることを使うと
μ*(B)=μ*(A)+μ*(B\A)
よってAがμ*-可測で測度有限ならば両辺からμ*(A)を引いて
μ*(B\A)=μ*(B)−μ*(A).
これはどんな本にも書かれていないが, これに気づくことができた. 簡単なことだが, 自明ではない.
[別証] (6行目からは或る人からの指摘による)
μ*の劣加法性より,
μ*((B\A)∪A)≦μ*(B\A)+μ*(A)
(直観的には, 一般にB\Aの被覆とAの被覆は交わるから)
すなわち
μ*(B\A)≧μ*(B)−μ*(A) (1)
ところで, μ*の劣加法性より, Aがμ*-可測であることは
∀C⊆X, μ*(C)≧μ*(C∩A)+μ*(C\A)
と同値である. ここでC=Bとすると
μ*(B\A)≦μ*(B)−μ*(A) (2)
「(1)かつ(2)」が成り立つから
μ*(B\A)=μ*(B)−μ*(A).
平易に言うと, 図形Aが図形Bに含まれるとき, 図形Bから図形Aを取り除いた図形の大きさはBの大きさからAの大きさを引いた物である, ということである.
訂正:故に(^t)A'=A'
位相空間M上の加法群の層とは, 位相空間Sと写像π:S→Mから成る組(S, π, M)または単にSで,
πは局所位相同型写像であり
各点p∈Mに対しS_p=(π^(−1))(p)⊆Sは加法群であり,
加法はSの位相に関して或る意味で連続である
を満たす物である. ここで, πが局所位相同型写像であるとは, 各点s∈Sに対してsの近傍V⊆Sとπ(s)の近傍U⊆Mが存在してπのVへの制限が位相同型写像, すなわちπ|V:V→Uが位相同型写像となることである.
S_pを層Sの茎, πを射影という.
他の代数的構造の入った層の定義も同様である.
(S, π, M)を層, U⊆Mを開集合とする. 連続写像σ:U→Sは∀x∈U, π(σ(x))=xを満たすときU上のSの切断, σ(U)は切断面と呼ばれる.
代数的構造の入った位相空間M上の層Sは局所同相写像π:S→XによるSの点sの近傍V(s)の像π(V(s))をπ^(−1)|V(s)で重ねて作られたシートV(s)の集まり{V(s)|s∈S}とみなせる. 切断σ:U→Sは適当なSの点の近傍Vに対するシートσ(U)⊆Vを取り出す操作とみなせる. σとπの合成がU上の恒等写像なのは, シートσ(U)を取り出してまた入れたら, もとに戻るという取り決めだと解釈できる. 茎S_p=(π^(−1))(p)は射影πの「逆写像」による, 層SのシートたちV(π^(−1)(p))にわたる線状の影と言える.
層は多変数複素解析や複素幾何でも多々用いられる.
数学では, 話者や読者の論理に高い厳密性が問われる. しかし, 数学において, 話者または読者の少なくとも一方がそれを破り, 表現を見やすく伝わりやすくすることがある.
例えば https://pdem.hatenadiary.com/entry/2020/10/10/115841 でも私がしたように, 関数を, 純粋な意味での集合から集合への写像f:A→Bとするのではなく, Aの任意の元xにBの元yが対応するときのy=f(x)と書かれる対応において, 対応fと従属変数yを同一視して, 関数をy=y(x)とすることである. 確かに正確ではないが, 具体例を扱うときや具体例に沿った論理展開をするときは便利であり, しかも厳密性は問題にならない. リンク先にあるように常微分方程式の初等的な解法は厳密性を犠牲にしなければ説明しにくい.
また, 多様体の接空間においても, 接ベクトルとベクトル場を同じ記号で書くことがある. 例えば2次元多様体Mの点pにおける接空間(T_p)(M)は局所座標を(x, y)とするとき2つの接ベクトルから成る基底
{(∂/∂x)_p, (∂/∂y)_p}
を持つが, ここでも右下の添え字pを取って基底を
{∂/∂x, ∂/∂y}
と書くことがある. 余接空間(T_p)*(M)についても同様に, 基底を
{(dx)_p, (dy)_p}
と書く代わりに
{dx, dy}
と書くことがある. もちろんこれらはベクトル場や微分形式の正確な定義を既知とした上での表現である.
また, リーマン計量gを内積gということもある. これはリーマン計量gが各点q∈Mで定める内積g_qとgを意図的に混同しているのだが, これは突き詰めて言えば最初の例である.
微分幾何において多様体の接空間やリーマン計量は多様体それ自体と同じくらいよく出てくるのでそれに関する式もたくさん出てくるし, 高次元になればそれだけ右下の添え字pがたくさん必要だが, 後者の書き方をすると式が簡単になるのである. 例えば「2次元リーマン多様体Mの余接空間(T_p)*(M)にMのリーマン計量gから定まる内積をg'と書く」とあれば, これについて, Mの各点qに対して
(g'_q)((dx)_q, (dy)_q)
=(g_q)((∂/∂x)_q, (∂/∂y)_q)
という式を
g'(dx, dy)=g(∂/∂x, ∂/∂y)
と簡単に書ける上に本質が見やすい. (なお, 普通g'もgと書く. )
数学の初学者には悩ましい習慣かもしれないが, 使い慣れたら便利である. それ以上の深い意味はないが…