序文とあとがきの人のブログ

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新訂版における超関数の定義について

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「新訂版 数理解析学概論」(https://www.amazon.co.jp/dp/476870462X/ref=cm_sw_r_cp_api_glt_i_P7RK86VMMZSND9BBWJAP?_encoding=UTF8&psc=1)では, 試験関数の成す線型位相空間D(Ω)を(D_K)(Ω)=D(K)の帰納的極限として定義している. そうするとD(Ω)が集合としては(C^∞)_0(Ω)に一致することは自明ではない. 正確な証明ではないが,「直観的な証明」を掲げておく. 一般には直和という仮定は普遍射の存在証明に使われる.

(Amazonに掲載できなくなったので移動)

小学校の掛け算の順序問題

例えば「5×4=20」が正解の途中式があるとして,「5が4個分ある」と「5の4倍」は同義であり, 量aの4倍は4×aなのだから「4×5=20」と答えても「5の4倍」の意味なら正解にしてよくないか?


数学的には自然数全体の集合をNで書くとき

掛け算:N×N∋(b, c)→bc∈N

と,

b∈Nによるb倍:N∋x→bx∈N

はbが変数か定数かの違いしかない.

陰関数定理の本質

陰関数定理の本質は, ((x, y), z)-空間における2変数関数z=f(x, y)の零点の集合(これは(x, y)-空間の曲線や曲面など, 超曲面)が局所的に関数のグラフとなる, すなわち或る点の或る近傍でy(またはx)について解けるためにはその点でのfのy(またはx)についての或る種の微分が0でないことが必要, ということである.


例えば, 実2変数実数値関数z=f(x, y)のグラフが曲面であることは良く知られているが, このグラフがxy-平面と交わると, その交わりは曲線になり, xの関数またはyの関数で一部または全体を描くことができる.


実3変数実数値関数の零点の集合が曲面になるのは, 例えば

g(x, y, z)=z−√[1−(x^2+y^2)]

の零点全体の集合が球面になることから納得できるだろう.

物理量を表す数は実数またはその組が妥当であること

f:id:PDEM:20220121090905j:plain順序集合と体の定義と距離空間とε-論法と有理数体の完備化による実数体の構成を既知として, 物理量を表す数は実数またはその組(複素数など)が妥当であると論理的に結論づけられた.


超実数など他のモデルが妥当である可能性は否定していないが少なくとも必然的に実数体は現れるということは言えた.



微分幾何における「留数」と「留数定理」

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ベクトル場Xの点pにおける指数の定義式
γ_p(X)
(1/2π)∫_C dθ
複素解析における留数の定義式
Res(f, a)
(1/2πi)∫_C f(z)dz
オイラー-ポアンカレの定理
Σ_i γ_(p_i)(X)
χ(S)
は留数定理の式
∫_γ f(z)dz
2πi Σ_i Res(f, a_i)
に良く似ていると感じた.

曲面Mの点pの近傍で定義されたベクトル場Xの点pにおける指数の別の定義式
(γ_p)(X)
(1/2π)lim_(Γ→p)∫_Γ g(dξ, ξ^)
複素解析における留数の定義式
Res(f, a)
(1/2πi)∫_Γ f(z)dz
オイラー-ポアンカレの定理(定理4.8.3)
Σ_i γ_(p_i)(X)
χ(M)
は留数定理の式
∫_γ f(z)dz
2πi Σ_i Res(f, a_i)

によく似ていると感じた.


参考文献:

千葉「ベクトル解析からの幾何学入門」(現代数学社)

荻上多様体」(共立出版)

初等幾何の研究成果

f:id:PDEM:20220120231629j:plain発想は前々からあったが, きちんと言語化したのは12年ぶり.


平行六面体の4本の対角線がそれぞれの中点で交わることの証明は高校数学では空間ベクトルを使うが, 初等幾何の問題なので初等幾何らしく初等幾何で示してみた.


16歳の時に受けた数学検定準1級で出題されたが, このように解いた.

測度論の研究成果(訂正・加筆済み)

Xを集合, μ*をXの冪集合における外測度とするときA, B⊆Xに対して

μ*(B\A)=μ*(B)−μ*(A)

が, Aがμ*-可測で測度有限かつA⊆Bなら(Bがμ*-可測でなくとも)成り立つのではないか?と考えたが, 証明ができた.


実際, 結論から言うと, 北田均「新訂版 数理解析学概論」383ページ目や, 谷島賢二「新版 ルベーグ積分関数解析」67ページ目と96ページ目で暗黙の了解でこれを用いていると考えられる記述がある.


[証明]

Aがμ*-可測であるから∀C⊆X,

μ*(C)=μ*(C∩A)+μ*(C\A).

C=Bとし, A⊆BならばB∩A=Aであることを使うと

μ*(B)=μ*(A)+μ*(B\A)

よってAがμ*-可測で測度有限ならば両辺からμ*(A)を引いて

μ*(B\A)=μ*(B)−μ*(A). 

Q.E.D.


これはどんな本にも書かれていないが, これに気づくことができた. 簡単なことだが, 自明ではない. 

[別証] (6行目からは或る人からの指摘による)

μ*の劣加法性より,

μ*((B\A)∪A)≦μ*(B\A)+μ*(A)

(直観的には, 一般にB\Aの被覆とAの被覆は交わるから)

すなわち

μ*(B\A)≧μ*(B)−μ*(A)  (1)

ところで, μ*の劣加法性より, Aがμ*-可測であることは

∀C⊆X, μ*(C)≧μ*(C∩A)+μ*(C\A)

と同値である. ここでC=Bとすると

μ*(B\A)≦μ*(B)−μ*(A)  (2)

「(1)かつ(2)」が成り立つから

μ*(B\A)=μ*(B)−μ*(A).

Q.E.D.

平易に言うと, 図形Aが図形Bに含まれるとき, 図形Bから図形Aを取り除いた図形の大きさはBの大きさからAの大きさを引いた物である, ということである.